『ONとOFFのセレナーデ』
対談 古城十忍 VS 夏川正一




●今回は、企画の夏川も交え古城さんにお話を伺いました。

─今回、古城さんとのおつきあいは初めてになりますが、きっかけはどういうことだったのでしょう?


夏川 10年くらい前、よく子ども劇場の会議などで劇団一跡二跳の制作の藤川さんと会ってたのがきっかけで、古城さんの芝居を見るようになりました。
非常に社会性に富んだ切り口のある古城さんとやってみたいという想いがつのり宮部みゆきさんの『R.P.G.』という企画が劇団で出た時、脚本・演出をお願いしますと言ったのが最初です。

古城 そうですね。

─古城さんは熊本日日新聞の記者をなさってたんですよね。

古城 そうです。4年やってました。

─その後すぐ劇団を始められたんですか?

古城 新聞記者時代も熊本で劇団をやってました。でもどうしても演劇で地方の時代はあり得ないということが身にしみて、東京で芝居をやるために記者を辞めたんです。そして劇団を解散して上京し、86年に劇団一跡二跳を旗揚げしました。制作の藤川と、看板の奥村は前の劇団から一緒です。

─じゃあ芝居をやりたいというのはずっと前からあったんですね。

古城 小学校の時から学芸会とかで劇をするのが非常に好きでした。高校演劇を1年生の終わりから始めて、その後とぎれてません。 

─それはご自身が書いて?それとも役者としてですか?

古城 役者もやってました。でも僕は高校の時から演出をやりたかったんです。でも演出家になるには全て解ってないといけないと思ってたんで、舞台監督も音響も照明も全てやりました。脚本を書き演出もし始めたのは、自分の劇団を創ってからです。

─ それであんなに柔軟に動けるんですね。すごくびっくりしました。オーディションで古城さん自身が動いて見せてくださったの!

夏川 そうそう。私も動かそうと思ったけど動かないから古城さんにやめた方がいいよって言われた。(笑)

古城 (笑)意外ですか?でも、うちも新人が入るとすごくびっくりしますね、最初。演出家が自らやるんだって。でも僕もそろそろ考えなくちゃいけないなと思っているんです。さすがに年なので。

夏川 全く同い年。

古城 44歳です。でもやっぱり、20代、30代からすると確実に落ちているんですいろんな事が。ただ僕は、映像と舞台の最大の違いは肉体がそこにあることだと思っているので、肉体をうまくコントロールできなければ演劇でやる必要がないと思ってるんです。だから体力が落ちてきてる現実とどううまくやっていくか。うちの主力の俳優も年齢が上がってきているので、とにかく動かせ動かせみたいにはできなくなっているんですね。そうすると今まで培ってきたものをうまく使いつつ、演劇である意味をちゃんと見出すようにしていかなければいけないので、そこら辺がちょっと大変かなと思ってます。

─今回の『ONとOFFのセレナーデ』にはチャットの場面がありますよね。チャットの世界を表現するって難しいと思うんですが?

古城 『ONとOFF』は初演が94年ですが、この芝居がチャットというものを舞台にした初めての作品なんですね。だから最初の時は、どうやったらチャットの世界に見えるかってすごく考えました。うちでは実験期間というのがあるんですね。やりたいことを俳優に説明していろいろやってもらって、意見を聞いて何回か試行錯誤して見るに耐え得るものになったら採用するみたいな。で、やはりその時もいろいろ実験しました。

─オーディションの時の動きですよね。

古城 ええ、それ以来チャットを表現する時にはいつもそういう演出をしています。しゃべっている人がとにかく動いて、目線を合わさない。で、テンポが速い。だから体の切れとかがとても要求される事が多いです。

─古城さんは読み合わせ稽古をしないそうですが、それはどうしてですか?

古城 それはさっき言ったのと一緒で、映像と舞台の違いはそこに肉体があることだと思うんですね。だから、読み合わせは、はじめどんな内容か感じをつかむためにはいいと思うんですけど、読みながら流れを創ってしまうと体を伴っていないので、その流れを頭が覚えてしまい、立ち稽古になった時に、頭で覚えたことを体で動かすと思うんですよ。それって僕は逆転してると思うんです。本来は体が動きたいように動いて、そこで生まれてくる言葉でやらなくてはいけないと思うんです。だから常に体を使いつつ流れを創っていくというふうにしたいので、僕としてはそういう稽古はやらないんです。

─うちはだいたい読み合わせ稽古をしてから、立ち稽古というのが定番だったので。

古城 新劇の劇団はほとんどそうですよね。それで創れる芝居もあるし、そうじゃない芝居もある。だから何を重視するかだと思うんです。僕の場合は、体がそこにあるっていうことを重視しているし、戯曲よりも俳優至上主義なんで。そう意味でいうと、『ONとOFF』は今度4回目なんですが、俳優が総入れ替えするのは初めてなので、しかも方法論が違う人達なので、どんな『ONとOFF』ができるんだろうって自分としてもすごく楽しみです。自分のやり方が通用しないかもしれないし。(笑)

夏川 そういう意味では、朋友が新人会時代から50年の歴史の中で培ってきたものと、古城さんの斬新的なアイディアの中に生まれてきた演出方法を組み合わせて、実験的にいろいろやってみたいという想いも僕の中にはあったんです。劇団員にいろんな刺激を与えてもらって、今後そこから『R.P.G.』という作品にうまくつながっていければと思っています。

古城 そっちに持っていこうとしてますね。(笑)

─(笑)『R.P.G.』は読まれてどうでした?

古城 初めて読んだんですけど、まさに僕の世界だと思いましたね。何でそう思ったかと言うと、まずインターネットの世界が中心になっているということと、あと家族の問題。うちもこのところ家族のことを何本もやってるんですよ。家族をどう再生するかとか。で、その両方の要素が入っているし、ネット上での疑似家族と現実の家族というのが、演出的に今まで自分がやってきた手法を更に発展させられる設定じゃないかと思ったんで、うち向きというか自分向きと僕も思ったんです。

夏川 非常に楽しみですね『R.P.G.』も。劇団一跡二跳、古城十忍の集大成を劇団朋友でやってもらっちゃう?! なんて、申し訳ない感じがするけど。(笑)

─(笑)恨まれそうですよ、劇団一跡二跳の方に。

古城 それはないですけど(笑)。

夏川 あともう一つは『ONとOFF』もそうですけど、古城さんは作品の中でコミュニケーションということを非常に大切にしていらっしゃる。

古城 ああ、そうですね。

夏川 で、今の時代の中でコミュニケーションというものをもう一度捉え直してみることが、芝居のできることのひとつなんじゃないかなと僕も思ってるんですね。だから『ONとOFF』を通しても、また『R.P.G.』を通しても深く掘り下げることができたらと。大上段構えて提示するって言うよりか、一つの疑問符なり考えることとして提示できたらと僕は思ってるんですが。

古城 そうですね。

─稽古は14日から。どうぞよろしくお願いします。本日はお忙しい中、本当にありがとうございました!


6月27日。
梅雨の晴れ間の一日、劇団稽古場にて。
司会 木野しのぶ

「ONとOFFのセレナーデ」詳細はこちら