こらむ


BOSSの日

それは、エイプリルフール。
劇団事務所は旅公演の合間の穏やかな日々。
一匹の犬がアトリエに迷いこんできた。

何に臆することなく、悠然とアトリエ内一階奥の小稽古場に勝手に入っていく。
ふふんという顔でグルリを見わたすと次はキッチンへ。
シャワー室・印刷室・倉庫・事務所を見回って、2階の大稽古場・楽屋隅々まで。
その図々しさとは裏腹にムクムクの愛らしいルックスは、
事務所女性陣のハートを鷲掴み。
高級ドッグフードまでごちそうになって。
いいなぁこいつ。

ドッグフード&ミルクを完食の後、アトリエのロビーで堂々お昼寝。
大物だ。
首輪を見ると「BOSS」の名前と電話番号が。
そうかオマエはBOSS君か。
電話してみるが誰も出ない。
飼主は心配していないのか??
どうする?
などと相談していると…ん?
何? 外に出たいの? 恩知らずめ。
まあいいやバイバイ!

…30分後。外が騒がしい。
アトリエ裏手に出てみるとBOSSがアパート玄関を占拠してお昼寝中。
アパート住人が警官を呼んでいる。
ついにはパトカーまでやって来た。
動物好きそうな警官が、パトカーのドアを開くとなんと自ら乗り込んでいくBOSS。
乗り物馴れしてる!
舌を出し上機嫌なBOSS。

寂しそうにしているのは私たちだけ。
小さくなっていくパトカーを見送りながらこころの中で、
「ドナ・ドナ」を歌っていた。

〈西本 貴〉