追悼 河野郁夫
コーノチャンが逝って仕舞いました。
告別式は雨が降ったり止んだり・・やっぱり雨が降っていました・・・
「稽古場に行く人でしょう」江古田の駅前で心細そうな顔をしていたからでしょうか、
声をかけてくれたのが、コーノチャン貴方でした。
スタスタとマイペースで歩いて行くので付いて行くのが精一杯、
地図を片手にようやくたどり着いた所が私達三期生が1日だけ通った江古田の稽古場、
私達が初めて顔を合わせた場所でした。
あれから三十年という月日が流れて行き、
出会った日と同じ雨の日に送る事になってしまいました。
雨と言えば、コーノチャン、傘を貸したことがありましたよね。
「赤いのだけどいい?」「させりゃいいさ」だけど戻ってきたのは黄色の傘でした。
「ごめん! 風が強くて途中で壊れちまってよォ、赤いのが無かったから」
「買って返す事ないのに」「だけんどよォ、気持ちだよ、気持ちィ!」
「ほんとに、もう。」壊れた傘で困ったのは貴方でしょうに・・・
・・・稽古場の玄関にボーッと立っている私に
「なァにしてんだよォ」と声を掛けてくれるのも、何時もコーノチャン。
決まって泣きたいような気分になっている時でした。
散々聞いてもらった後、「まあ、やるしかねェべさァ」
大きな目で茶化したように言われると「そうだね」と思わず笑いながら答えてしまっていました。
だから、私、思うんです、雨の日に稽古場の玄関にボーッと立っていれば、
後ろからポンと肩を叩いてくれそうな、そんな気が・・・。
長旅から今帰って来た、そんな顔したコーノチャン貴方が・・・。
深尾眞理
『キエ』の稽古中の2002年9月17日、劇団員の河野郁夫が亡くなりました。
享年55才でした。
1999年からガンと闘い、入退院を繰り返しておりましたが、
病状が悪化し帰らぬ人となりました。
体調の良い時には劇団の総会や公演などにも積極的に参加しておりました。
劇団での最後の舞台は、
1995年カンダパンセホールでの『虹の橋』(澤田ふじ子原作/田島栄脚本/吉原廣演出)。
まだまだ活躍して頂きたかったのにとても残念です。
ご冥福を心よりお祈りします。
河野郁夫
1973年劇団新人会(現朋友)入団
劇団出演作
『明日の教師たち』『ターニャ』『島』『深川安楽亭』
『傷だらけの手』『五代のラブレター』
『ガラスの家族』『幸福』『虹の橋』