キエの「魂」を!主演の長山藍子語る

稽古が始まって2日目。
作家の八木氏を交えた読み合わせ稽古の後、劇団稽古場にて、
主人公・キエを演ずる長山にインタビューしました。


-この企画は、ずいぶん前からあがっていたようですが
長山『平成になってもう14年になりますが、
私たちが生まれた「昭和」という時代を振り返ってみたいという想いは、
小島や横井をはじめ、私の中にずいぶん前からあったんです。
で、昭和を題材にした芝居を何本もお書きになっている八木先生にお願いしたところ、
快く引き受けてくださいました。』


-
今回、八木版「女の一生」とうたっていますが、
「女の一生」といえば、新劇界では森本薫作・杉村春子主演の「女の一生」が有名ですよね。

長山『そうですね。実際この作品は、作家の八木先生が森本作「女の一生」を土台に、
戦後の「女の一生」をお書きになりたいということがあったので
登場人物や設定などに森本版を思わせるようなものはありますね。』

-
藍子さんも意識されてますか?
長山『私としては、これは昭和という時代を背景に持った家庭劇だと思っています。
今まで、『ターニャ』や『初蕾』など女性の半生記を描いたものはいくつか演ってきましたが、
この作品のように17才から64才までという長い歳月を演じ通すのは初めてのことですね。
何しろ17歳の登場は三つ編みのお下げ髪ですもの!』


-藍子さんがキエを通して表現したい事は何ですか?
長山『キエには決して折れることのない『葦』のようなしなやかな強さを感じますね。
今の日本人が置き忘れてしまったものがキエにはあると思うんですね。
うまく言葉では説明できないんですが、
人は皆、家とか家族とか社会とか、いろいろなしがらみの中で生きている。
17歳のキエは、あえてそのしがらみの中に飛び込むんです。
そしてキエはその「囚われ」の状況を、負の意識ではなく生きるエネルギーに変えていくんです。
その囚われているということをマイナスと考えるのかプラスと考えるのかは、本人次第。
その人の心の持ちようで変わってくると思うの。
この芝居の登場人物それぞれが囚われびとでもあるんだけど、
キエには、純粋な自立した「魂」があると思えるの。
そんなキエの「魂」が演じられたらいいなと思っています。』


-
それが、私達の忘れてしまっているものということなのですね。
長山『なにか想像を超えるいろいろなことが次から次へと起きている今、
子供のいない私でさえ、子供達の未来はどうなるのだろうと不安になります。
私はこの作品を、幅広い年代の方々に是非観て頂きたいと思っています。』


-藍子さんにとっての「昭和」はどんな時代でしたか?
長山『私は昭和16年生まれですから、キエが17歳で椿家に来た時、1歳だったわけですね。
父の仕事の都合で厚和(内蒙古フフホト)で生まれ、
昭和20年、新京(現長春)に居る時にそこが前線になるということで引き揚げてきたんです。
その途中で終戦を迎え、1年程朝鮮に拘留されました。
弟は生まれて間もなかった。
私は4歳でしたが、食べる物も着る物もなく、辛かったことをはっきり覚えています。
でも、母は強かった。
戦前に生まれた女性は強い。ほんとにそう思います。』


-キエもその時代の人ですよね?
長山『そうです。だから強い。揺るがない「魂」をもっている。』

-今回俳優座から客演の方をお迎えしていますが、それぞれの方に一言いただけますか?
長山『浜田さんは、長い歴史のある俳優座でも最年長の大先輩。
存在感があって、でも、飄々としたところもおありになるとてもチャーミングな方です。
積み重ねてきた人生分の深みのある味のある演技をなさっていて、
浜田さんを見ていると、俳優の仕事ってとても素敵だなって思えてきます。』


-もうひと方は藍子さんのご主人でもありますが
長山『今回は八木先生と西川さんが、 うちの劇団にはないキャラクターということで、
浜田さんと武正を外からキャスティングして下さったのです。』


-夫婦共演というのはいかがですか?
長山『私たちは、普段わりとさっぱりした関係なんですが、
稽古場に行ったらどうなるんだろうという気持ちはありました。
でも以外や以外、何の抵抗もなかった。
同じ役者としていい仲間だし、いい友人。 劇団の仲間と同じ感覚です。
そんな風にいられることに少々ビックリしています。これからの稽古がとても楽しみです。』


-最後に、この公演に賭ける思いをお聞かせください!
長山『いつもそうなんですが、創作劇を創るというのはとても大変な作業なんです。
幕が開くまでどうなるかわからないし。だからすごくドキドキしています。
でも今回も、八木先生、西川さんはじめ、
たくさんの素晴らしいスタッフの方々に支えられてほんと、心強い。
みんなと手を取り合い、よい作品創りをするために努力して、
朋友にしか出来ない舞台を創り上げたいですね。
とにかく今は、
この作品が一人でも多くの人に観ていただけるようないい作品になることを願ってがんばります!』

-
私もがんばります!ありがとうございました。
〈インタビュアー:木野しのぶ〉

 

紀伊國屋ホールでの公演は、10月19日(土)から24日(木)まで、全8ステージ。
劇団が総力を挙げて取り組む『キエ』―囚われ女の日記―どうぞご期待下さい!