モノローグ
木野しのぶ
学生の時、試演会でマーシャの役をやった。
といっても、菅原卓作「歴史は」という、演劇の歴史を観せる芝居の中の「三人姉妹」。
四幕目の抜粋だった。演出・指導は今は亡き俳優座の阿部廣次先生。
マーシャの役は、自ら立候補した。どうしてもやりたかった。
というのは、やはり今は亡き渡辺浩子先生の授業で、マーシャのセリフをみていただいた時に
「良かったわよ。きれいだったし、どんどん積極的に前に出てやりなさい」
と言われ、その言葉がとても嬉しかったからだ。
忘れもしない、マーシャが他の姉妹に、ヴェルシーニンを愛していると告白するところのセリフ。
変にマジメで、堅くて、あか抜けなくて、地味な十代の頃である。
劇団に入った。
あまり大きな役につくこともなく、十数年が過ぎた。
待っていると、どんどん年だけ取ってしまう。
先輩の西海真理さんが、勉強会を始めた。私も参加させていただくことにした。
清水邦夫作「楽屋」。この勉強会は、アトリエ公演になった。私は、女優Aの役。
最後に「三人姉妹」のラストのセリフをしゃべる。
二人の妹を抱き寄せ「それがわかったら、それがわかったら・・・」
オーリガのセリフだった。
一幕の芝居だったが、久々にたくさんのセリフをしゃべり、動き回り、
思い出深い作品となった。
今度の本公演。
何と、イリーナの役が回ってきた。
三人の姉妹で、一番私とはキャラクターが異なると思っていた役だ。
仮に「三人姉妹」をやることがあったとしても、
この役だけは、一生やらないだろうと思っていた役だ。
しかも大先輩方との共演。嬉しさ半分、驚き半分。複雑な気持ちで稽古に臨んだ。
が、本読みをしていくうち、少しずつ自分の中にもイリーナ的な部分があることに気がついた。
三度目の「三人姉妹」。思いもよらなかったイリーナだが、
憧れの紀伊國屋に立つ自分の姿を想像して、
今、新人女優のように心ときめいている。
木野しのぶ(きのしのぶ)プロフィール
東京出身。桐朋学園演劇科卒業後、86年劇団新人会(現朋友)入団。
主な出演作(劇団)「初蕾」「石棺」「山彦ものがたり」
「パパあべこべぼく」「お葉と呼ばれたモデル」「マンザナ、わが町」
(外部)「赤ひげ」「ヴェニスの商人」「おんなは一生懸命」「おしん」
(TV)「我が子よ」「腕まくり看護婦物語」(映画)「千羽鶴」「親鸞白い道」
物事万事損得を考えずに生きている。
自分の出来ることは何でもやる。人や、仕事の大変さでは判断しないようだ。
逆に出来ないことは、よく考えた上で、早めに断りを入れる。
人の信頼は、そんなところから自然と生まれるのではないだろうか。
「木野しのぶ」は芸名であり、名付け親は桐朋学園大学演劇科の恩師だ。
昨年4月。アトリエ公演「マンザナ、わが町」(井上ひさし作・高木達演出)を
企画・出演、好評を博した。
(末永明彦)