モノローグ
菅原チネ子



ばばあのグチ

あのセリフはこう・・・あそこの動きはこう・・・と
今まではメーキャップしながら鏡を見て舞台のことばかり考えていた。
が、この節は何も考えてない。
ただじっと鏡に向かって手を動かしていると、 ずんずんと気持ちが暗く落ち込んで
人と口をききたくなくなくなってくる自分がいる事に驚く。
身体が動かず自分で思う様に何も出来ないでいる人の不機嫌な重い気分。
それでもやってゆかなくっちゃと、それをはね返して、
よろよろと立ちあがり舞台裏に行く。

 シワの一本二本描かなくったって、私は十分ばばあだ!!

器用な生き方が出来てこれなかったと同じ様に、器用に演技が出来ない。
めいっぱいどなり散らし、めいっぱい動くしかない。
もっと力を抜いてやればいいのに・・・と私は自分に云ってみる、
けど出来ない、なにかが違ってくるような気がする、腰もヒザも痛くて、
このまま普通に歩いてやろうか・・・と衝動的に思った日もあった。
このまま続けていたら本当にあし腰が立たなくなるよ・・・。
けど芝居なんだから、そういう役なんだから・・・。

街中でそうゆう人達いっぱい見かけるだろう、
その人達の代表と思ってがんばるしかないよ・・・と自分をふるいたたせる、
身体は辛いけど思う事、云いたい事どんどん云って人間の生きざまを見てもらおうよ。
ばばあのセリフじゃないけど
「飲みたいだけ飲んで食べたいだけ食べてそれでポックリいけりゃそりゃ幸せさね」
声がかれても動きが鈍くなっても、好きな舞台をやって、
それでポックリいけりゃ、そりゃ幸せさね。
こうなりゃ二十一世紀、正月からガンガンやるきゃないね。


菅原チネ子(すがわらちねこ)プロフィール
 岩手県出身。劇団四季研究所、文化座を
経て新人会(現 劇団朋友)へ。

 出演作品は『初蕾』『五大のラブレター』『幸福』他、
外部の舞台やTVにと、多数出演し活躍中。

 現在、全国を巡演中の『わがババわがママ奮斗記』では、
骨粗鬆症で寝たきりのタツさんの役だ。私のおばあちゃんの役でもある。
「今はばばあだけど、昔は二枚目をやってたのよ」と語った通り、
偶然見つけた当時のパンフレットは真実であることを物語っていた。
 普段の顔は、幅広い層のファンを持つ素敵なマダム。
また役者としての後ろ姿は沢山の事を無言の内に教えてくれる・・・・・・
がしかし、今はタツさんそのものなのだ。
『わがババ』も100ステージを越えると、チネ子さんはタツさんになり、
そのタツさんはどんどんパワーアップしてくる。
21世紀は孫にとって恐ろしいことになりそうだ。
最近私は秘かに尊敬と憧れをこめてこう呼んでいる。
ー進化するばばあー
乞う御期待。
〈沓名紀孔代〉