9月11日、夏の暑さがまだ残る中、
三鷹台の劇団稽古場で『お葉と呼ばれたモデル』の稽古が始まった。
この時期、劇団では『女たちのジハード』などの稽古も並行して行われるため、
『お葉と呼ばれたモデル』組総勢20名近くは
クーラーのない小稽古場での稽古初日となった。
稽古場の争奪戦がくり広げられるという
今までにないくらいの活気に満ちあふれた劇団で、
本当にアツーイ初日となった。
企画、演出の吉原廣によるスタッフ、キャスト紹介に続き、初めての読み合わせ。
劇団内外交えてのオーディションで主役のお葉に選ばれた白井はるなは、
昨年入団したはかりの新人。
初めての劇団公演出演で大役を得、少々緊張気味である。
夢二役には進藤忠。
スペース公演第一弾『VALUE―価値―』以来4年ぶりの劇団公演出演である。
そして、今回の芝居の進行役でもある書生、小谷には
『虹の橋』以来となる松岡由眞。
脚本の杉浦久幸氏が珍しく自身を投影させたというこの役は、
原作では小原という名で史実にそって登場する。
が、今回の芝居ではこの役を大きく膨らませ、
意外なドラマ展開のための中心人物としている。
幕開きは、大正14年7月。
夢二の建てたアトリエ、少年山荘。
流行画家の竹久夢二もその最盛期を過ぎていた。
当時夢二のモデルをしていたお葉(本名・佐々木カ子ヨ・〈通称・嘘つきお兼〉)は
彼の愛人でもあったが、夢二の書生をしていた小谷と心中未遂事件を起こす。
事件後、心身共に疲れ果てたお葉は一人療養のため金沢にいっていた。
そこへ「会いたし、夢」と手紙が届く、
急いでアトリエに戻るとそこには、故郷に帰ったはずの小谷がいた。
夢二は、女流作家の山田順子(杉本悦子改め杉本早希)と
スケッチ旅行に出かけているという。
驚くお葉。
夢二の留守中にお葉をおびき出した小谷の目的は、彼女を描くことにあった。
「夢二式」の女ではない本来の佐々木カ子ヨ自身を・・・・・・。
小谷の導きでお葉は忘れていた、忘れようとしていた自分を思い出していく。
記憶の錯綜―
「嘘つきお兼」が嘘で塗り固めてきた過去が次第に暴かれていく。
本来の自分とは・・・・・・。
自分の望んだ姿とは・・・・・・。
藤島武二、伊藤晴雨、そして竹久夢二。
全く異なった絵を描く三人の画家のモデルとなったお葉。
その三人の画家に見せたそれぞれ違った自分。
それは、モデルとして生きねばならなかった彼女の必死の姿だったのか。
本来の自分を取り戻したとき彼女の取った行動は・・・・・・。
モデルとして画家に求められるまま生きてきた一人の女性が、
女として、人間として自立していく。
読み合わせ後、この芝居のテーマを演出の吉原はそう語った。
また脚本家は、
そんなお葉の姿に、現代の世の中で世間の風潮に合わせて自らを表現しようとする
若い女性の姿を重ねてみたりもするという。
「大正ロマン」華やかなりし時代の歴史に埋もれていた一人の女性の真実の姿。
愛と葛藤。
稽古場での葛藤の日々は始まったばかり。
本番まで、まだまだアツさは続きそうだ。
出演は前記の他、お葉をめぐる画家、藤島武二に小嶋敏彦、伊藤晴雨に石川恵彩。
夢二の元妻たまきに木野しのぶ。お葉の母、山蔦ハナに、菅原チネ子。
やり手のモデル紹介業宮崎菊は、益海愛子。
夢二の親友であり医師の正木には、椿基之。
画学生、花井、五木、久本信夫には、それぞれ浦田秀利、渡邊弘、清野公亘が勤める。
公演は、10月25日〜29日まで。
昨年『女たちのジハード』を上演した中野のザ・ポケットで、7ステージ。
〈乞うご期待!〉